『平家物語』冒頭

祗園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。

娑羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらはす。

おごれる人も久しからず、
ただ春の夜の夢のごとし。

たけき者もついにはほろびぬ、
ひとえに風の前の塵に同じ。



口語訳

祇園精舎の鐘の音には、
諸行無常、すなわちこの世のすべての現象は
絶えず変化していくものだ、という響きがある。

沙羅双樹の花の色は、
どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものである
という道理をあらわしている。

世に栄え得意になっている者も、その栄えはずっとは続かず、
春の夜の夢のようである。

勢い盛んではげしい者も、結局は滅び去り、
まるで風に吹き飛ばされる塵と同じようである。









「平家にあらずは、人にあらず」

栄華をほこった平家も貴族化して、
ますらおの源氏に敗れた。

そして全てを失った。

ヨーロッパのローマ帝国も
シナの秦も漢もモンゴル帝国も清も
消えるときは、あっという間に塵のように無くなってしまった。



多くの国々は、他国と直接、接している。
だから国境というものに、敏感だろう。
他国と隣接していれば、警戒心も維持できる。

かたや日本は、四方を海に囲まれた島国であり、
外国と直接つながっていない。

そこに油断が生まれる。
敵の侵略は、軍事だけではないのだ。

四方を海に囲まれた島国である点は、イギリスも同じであり、
イギリスもまた、日本と同じように保守的な国民性である。

しかし、本来、保守的であるはずの日本人が
高度経済成長、バブルなどの経済的・物質的な豊かさを享受するにつれて、自己の目先の利益を考えるだけの個人主義的な国民性に変わってしまった。

「公」の意識がなくなってきたのだ。



私が学生の時、日本はバブル真っ盛りだった。
テレビ画面の札束が舞っている映像を見て
「大人たちが狂っている。日本は絶対おかしくなるぞ」
と思ったものだった。

バブルではじけてしまったのは、泡だけではない。
狂乱物価で狂乱したのは、物価だけではない。

日本の栄華を極めた平家たちが、日本を動かしている。





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